AIが「感性」という知能を理解するには? ~AIと人が共存する未来に向けて必要なこと~
更新日:9月12日
現代のAIに足りないもの
AIと人が共存する未来に向けて、現在のAIに最も欠けていることは何でしょうか。AIは問題を高速かつ正確に解くことなどには長けていますが、人間社会は主観的な「感性」が絡んでおり、より複雑です。感性とは「感覚の知性」であり、「知能」の一つと言えます。AIが、「感性」という知能を理解することによって、より人に寄り添い分かり合えることができる未来が開けていきます。では、「感性」とは一体何でしょう。
感性とは
大辞林第三版を参考にすると、「感性」の第1の意味は外界の刺激に応じて、知覚・感覚を生ずる感覚器官の感受能力のことであり、第2の意味は人間の身体的感覚に基づく自然な欲求のこととあります。つまり、感性は第1の意味として「外界の情報を知覚し、感じる能力」、第2の意味として「感情」であると感性AIでは考えています。
人々は世界のことを五感を通して様々な形で経験しています。五感それぞれの感覚受容器から入ってきた情報は、脳においてその人がそれまでに経験した情報と統合し価値判断を行っています。このように、外界の世界を感じて生じるものが感性なのです。
現在のAIは人が世界を感じる際の、最初の処理である、外界のものがどういったものであるのかを認識する部分については高精度に行えるようになりました。ちょうど、五感それぞれから入り感覚受容器を通して得られる情報の処理にあたる部分の処理のことです。しかし、人はそこから好き・嫌いや、様々なことを思いますし、それは人それぞれで正解不正解がありません。これが感性データにあたりますが、正解不正解が無く、回答が無限にある感性情報についてAIに学習させることは、難しい課題となります。
感性情報の獲得と処理
そのような感性情報を扱う方法の1つとして、SD法(アンケート)により情報を得た後で統計解析し、より少次元データへ変換することで構造を理解する方法があります。SD法とは「明るい」「暗い」などの対になる意味を持つ形容詞対を置き、対象物に感じる印象の程度を回答してもらう方法です。これにより得られた情報を統計解析により分析していく訳ですが、こちらは学術的にも用いられる精度の高い有用な方法の1つです。一方で、この方法では回答する量が多く被験者への負担が大きい、被験者の評価が尺度の種類と幅によって制約を受ける、という課題も残ります。