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感性AI用語集

MI(マテリアルズ・インフォマティクス)

マテリアルズインフォマティクス(Materials Informatics、以下MI)は、材料科学とデータサイエンスを融合させた新しい研究開発手法です。大量の材料データを機械学習やAI技術で解析し、目的の物性を持つ材料を効率的に探索・設計します。


従来の材料開発は、研究者の経験と勘に基づいた仮説検証の繰り返しでした。候補材料を試作し、評価実験を行い、結果から次の仮説を立てる――このサイクルには膨大な時間とコストがかかります。


MIでは既存の実験データや文献データをAIに学習させることで、まだ実験していない材料の物性値を予測したり、目標とする特性を実現する最適な組成・配合を提案したりすることが可能になります。実験回数を大幅に削減しながら、より高性能な材料を短期間で開発できる点が最大の特徴です。


世界的にMI市場は拡大しており、2030年までに年平均成長率30%超の予測もあります。日本でも自動車、化学、電子材料など幅広い産業で導入が進んでいます。



なぜ今「MI」が注目されているのか


MIへの注目が高まっている背景には、企業が直面する複数の課題があります。


開発期間とコストの削減

新素材の開発には通常5〜10年を要し、数億円規模の投資が必要になることも珍しくありません。MIを活用すれば、シミュレーションで候補を絞り込んでから実験を行うため、開発期間を半分以下に短縮できるケースも報告されています。


脱炭素・代替素材へのニーズ

環境規制の強化により、従来材料からの置き換えが急務となっています。しかし代替素材の探索は試行錯誤の連続です。MIを使えば、性能を維持しながら環境負荷を低減する材料を効率的に見つけ出せます。


人材不足と技術の属人化

熟練研究者の退職により、長年蓄積されたノウハウが失われるリスクがあります。MIはデータとして知見を蓄積・共有できるため、組織全体の開発力を底上げし、属人化を解消する効果があります。


MIに必要なデータとは?

MIの精度を左右するのがデータの質と量です。


基本となるのは組成・配合データです。材料を構成する成分の種類と比率、添加剤の有無、処理条件などが該当します。これに対応する物性データ――強度、硬度、熱伝導率、粘度、融点など測定可能な特性値――を紐付けることで、AIは材料構造と物性の関係性を学習します。


また試験条件・環境情報も重要です。同じ材料でも温度、湿度、荷重条件によって挙動が変わります。これらの条件を含めてデータ化することで、実用環境での性能予測が可能になります。


そして見落とされがちなのが感性・質感などの非物性データです。自動車の内装材、化粧品のテクスチャー、繊維の風合いなど、製品価値を左右する要素の多くは数値化しにくい「感じ方」に依存します。従来のMIではこうした感性情報を扱えませんでしたが、これこそが次世代MIの差別化ポイントになります。



従来MIの課題:質感・触感が数値化できない


MIが万能かといえば、そうではありません。最大の課題が感性的な評価の扱いにくさです。


「サラサラ」「しっとり」「もちもち」「高級感がある」といった表現は、製品開発の現場では日常的に使われます。しかしこれらは主観的で、人によって感じ方が異なります。ある人が「やわらかい」と感じるものを、別の人は「ゆるい」と評価するかもしれません。


このような評価のブレは、AIの学習を困難にします。機械学習モデルは一貫性のあるデータを必要としますが、人間の感覚評価は再現性が低く、データとして蓄積しにくいのです。


さらに、質感を測定する物理的な指標が確立されていない分野も多くあります。触感を表す「しっとり感」を測定する標準的な方法はありません。粘弾性や表面摩擦係数などの物性値である程度は推定できても、人が感じる「心地よさ」とは必ずしも一致しません。


結果として、従来のMIは測定可能な物性値の予測には強いが、感性評価が重要な材料開発には適用できないという限界がありました。



質感を数値化する新しいアプローチ

この課題を解決する鍵が、オノマトペ(擬音語・擬態語)を活用した感性評価の定量化です。


日本語のオノマトペは感覚を表現する言葉として非常に豊かです。「ふわふわ」「さらさら」「つるつる」といった言葉は、触感や質感を直感的に伝えます。


感性AIのMIサービス「MateriaLinkでは、国立大学法人電気通信大学坂本真樹研究室の長年の研究に裏付けされた特許技術を活用しオノマトペを通した質感の数値化に対応しています。


さらに詳しい資料のダウンロードはこちらから
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MateriaLinkでは、被験者に素材の質感をオノマトペで回答してもらったデータをAIエンジンで解析することで、質感を数十種類の評価尺度に変換します。


この手法により、「やわらかい-かたい」「あたたかい-冷たい」「なめらか-ざらざら」といった対立する感覚軸上に、各材料の質感を定量的に配置できます。従来の5段階評価やSD法(Semantic Differential法)と比べ、オノマトペ回答は被験者にとって直感的で、回答の負担が少なく、感覚をより細かく表現できるという利点があります。


MateriaLinkの質感定量化フロー

さらに重要なのは、これらの質感データと物性値(硬度、粘弾性、表面粗さなど)との関係を分析できる点です。「しっとり感」がどの物性値の組み合わせで生まれているのかが明らかになれば、その物性値を実現する材料配合を予測することも可能になります。


従来は「この材料の触感はどうか?」という順方向の評価しかできませんでしたが、MateriaLinkでは「この触感を実現する材料は何か?」という逆方向の探索が可能です。開発初期段階で目標とする質感を設定し、それに向けて材料設計を進められるため、試作の手戻りが大幅に減少します。



マテリアルズインフォマティクス導入でよくある失敗と解決策

MI導入が期待通りの成果を上げられないケースも少なくありません。よくある失敗とその対策を整理します。


データが集まらない

AIは大量のデータを必要としますが、社内に蓄積されているデータが少ない、フォーマットがバラバラ、紙の実験ノートに記録されていてデジタル化されていない――こうした状況では機械学習が機能しません。


解決策は、少量データでも学習可能なアルゴリズムの活用や、データ拡張技術の導入です。MateriaLinkでは、オノマトペ回答から感性データを生成することで、従来は取得困難だった質感データを効率的に蓄積できます。


感性項目が扱えない

物性値予測には成功しても、最終製品の「使い心地」「心地よさ」といった感覚的な評価を反映できず、実用化に至らないケースがあります。これは前述の通り、感性を数値化する仕組みがなかったためです。


オノマトペベースの感性定量化技術を組み合わせることで、物性と感性の両面から材料を評価・予測できるようになります。



PoC(概念実証)止まり

小規模な検証では効果が見えても、実際の製造ラインや市場環境に適用すると精度が落ちる、あるいはシステムが複雑すぎて現場で使われない、といった問題です。導入時から現場の運用を想定した設計が重要です。


MateriaLinkはWebベースのシンプルなインターフェースで、専門知識がなくても使えるよう設計されているため、研究部門だけでなく製造や営業部門でも活用されています。



これからのMIは「物性+感性」

MIの進化は、物性データだけでなく多様なデータを統合するマルチモーダルAIの方向へ進んでいます。画像、音、触感、匂いなど、人間が製品を評価する際に使うあらゆる感覚情報をデータ化し、機械学習に組み込むことで、より実用的な材料予測が可能になります。


特に重要なのがデジタルマテリアルデータベースの整備です。企業内で蓄積された実験データ、公開されている材料データベース、そして感性評価データを統合的に管理し、AI学習に活用できる形で整理することが、MI成功の鍵を握ります。文部科学省もマテリアルDX推進の一環として、データ標準化やプラットフォーム構築を支援しており、今後さらに環境が整っていくでしょう。


海外でもMIへの投資が加速しています。米国ではMaterials Genome Initiativeのもと、材料開発の期間を半減させる取り組みが進行中です。欧州もHorizon Europeで材料科学とAIの融合研究に多額の予算を配分しています。日本企業が国際競争力を維持するには、物性だけでなく感性まで含めた総合的なMI活用が不可欠です。



まとめ

マテリアルズインフォマティクスは、データとAIの力で材料開発を劇的に加速する技術です。しかし従来のMIは測定可能な物性値の予測に限られ、製品価値を左右する「質感」「触感」といった感性的要素を扱えませんでした。


この課題を解決するのが、オノマトペを活用した感性の数値化技術です。MateriaLinkは、質感をデータ化し、物性値予測と組み合わせることで、感覚的な目標を持つ材料開発を効率化します。自動車、化粧品、食品など幅広い業界で、開発期間の短縮、コスト削減、属人化の解消に貢献しています。


「この触感を実現する材料は何か?」――その答えをデータで導き出せる時代が、すでに始まっています。



MateriaLinkについての詳細な説明、自社の材料開発への適用可能性を相談したい方はお気軽にお問い合わせください。


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